研究概要:森林情報風景学

 自然環境と人間社会の間にある時空間的な隔たりを、感性的認識と情報通信技術によって克服する方法論を探究しています。森林科学および教育学に学術的基盤を置きつつ、デジタル空間の森林情報も含めて風景として感性的に捉える視座から、実践的・計画論的な研究を行っています。

森林景観の定点記録

 森林の景観は、短期間のうちに大きく変わることもあれば、長大な時間をかけてじわりじわりと移ろいゆくこともあります。それらを目の当たりにせずに、森の真の姿は見えません。現代社会に生きる私たちに直接それを見届けることは難しいため、森にカメラやマイクを置いて景観変化を記録することは有意義です。
 当研究室は、100年以上の長期記録を目指して、1997年に開始された「サイバーフォレスト」研究プロジェクトに参画しています。各地の森林における実証的研究を通して、森林景観の定点記録に関する方法論を蓄積しています。

参考:サイバーフォレスト研究チームの25年

悠久の移ろいを見届ける

 森林景観の変化を淡々と記録し続けるだけでは、その大部分は変化の乏しいアーカイブです。専門的な知識や経験がないと、それを意味のあるものとして捉えることは難しくなります。森林景観における悠久の移ろいを多くの人に見届けてもらうためには、映像や音のアーカイブから適切な取捨選択および編集を行うことが求められます。
 当研究室では、このプロセスを教材開発として位置づけ、環境教育の視座からその方法論を検討しています。成果はポータルサイトCF4EEにて公開し、教育現場での活用を促します。

参考:未知なる自然との邂逅

自然体験の計測評価

 森林景観の定点記録を環境教育の教材として活用していくにあたっては、対象となる学習者が森林をはじめとする自然に関してどのような経験を有しているかを考慮することが重要です。特に、定点記録を行っている森林を直接体験しているか否かは、教育効果に大きな影響を及ぼすと考えられます。
 当研究室では、工学・情報学分野とも連携しながら学習者の自然体験を計測評価するとともに、その成果をもとに直接体験と疑似体験とを連携させた森林環境教育のプログラム開発を行っています。

参考:数値で評価できない部分に光を

森を感性で捉える

 たとえカメラやマイクで森林景観を24時間365日ずっと記録し続けたとしても、森林のすべての変化を捉えられるわけではありません。むしろ、新たな未知なる自然の姿に遭遇するプロセスとも考えられます。
 当研究室では、科学的・論理的な方法だけでなく、音楽や文芸などの各種芸術をはじめとする感性的な森林の捉え方についても、森と人の現代的な関係を築く方法論として捉え直していきます。それは、単に「繋ぐ」という表現では言い尽くせない、まだ誰も知らない新たな森と人との関係のあり方を「紡ぎ直す」ための象徴的な営みです。

参考:社交から「森交」へ